<息子の受験日記 後編>
 現役は広大を受けて、ダメだったら一浪して、阪大でも受けてみろ。高校担任の言葉。人の家庭の事情も知らないで、 と思いながら、今こうなると考えざるをえなかった。私が考えたのは神戸大経営学部であった。この時点では息子にとって、 広島に「あこがれ」の大学は無い状態であった。浪人して目標を見失ってしまっているという最悪の状態である。 何か目標を持たせねばならないと思った。神戸大のことをいろいろで調べた。
阪大は自他共に認める天下の旧帝大である。調べる必要も無いが、神戸大のことは非常に気になった。やはり阪大は難しい。 難易度で少し下の神戸大学の方が現実的に思えた。神戸大経済・経営は旧神戸商大の流れをくむ名門である。就職や実業界 での実績はすばらしい。上場企業役員輩出率では東大・京大・一橋につづく不動の4位である。公認会計士試験合格者も 平成19年は105人で国立大トップである。特に目を引いたのはずば抜けた就職力である。私の判定では就職の良さで 知られる慶応大学経済学部を明らかにしのぐ。しかし、やはりステータスで旧帝大には劣る。実績かステータスか。 残念ながら、私には判らなかった。しかし、難易度の高い阪大を受ける必要はないと思った。神戸大学なら難易度から見ても、 一年後の目標として無理無いところである。また、頑張ればどんな夢もかなう大学と思った。民間・公務員そして公認会計士。 あらゆる可能性を追求できるすばらしい大学と思った。
 ただし難関校をうけると落ちるリスクが高くなる。落ちたときどうするか。今の太郎の学力で地元私大はかわいそうである。 東京や関西の私立に行かすことになってしまう。その覚悟をしなければならなかった。後でも述べるがこれは私にとって、 大変なことであった。しかし、とにかく早く、何か目標を持たせないといけなかった。英数の得意な太郎なら私学の トップ慶応大経済学部は狙えるのではないかとも思った。私は解けもしない慶応経済の過去問を自分でやってみた。 小論文はサラリーマンの終身雇用と能力給について。あの子にはどうか。慶応経済に行く人は幼い頃から作文で入選したり、 賞をもらったりしているのではないか。決して天才肌ではない(と私は感じていた。)凡人の太郎には難しいかな、と感じた。 経済的な面も有りやはり、第一志望にはして欲しくなかった。 本人は依然としてかなりのスランプ状態が続いていた。私は神戸大を勧めようと決心していた。
 4月に入りいよいよ予備校を決めなければならなかった。私は当然のごとく昨年の大躍進の転機となった A塾を考えていた。しかし太郎の言葉は意外であった。A塾ではなく、B塾。しかも「スーパー京大コース」 に行きたいと言ってきた。本人が言うには京大入試は数学で決まる。京大数学は難問奇問で有名。そこですごい差がついてしまう。 国語や社会の点差など吹き飛ばしてしまう。配点の高い英語については現時点でも太刀打ちできる。数学さえ上がればいける。 可能性にかけて、浪人前半はとにかく数学重視でどこまでいけるかやってみたい。なんとしてもB塾の「スーパー京大コース」 の数学の授業を受けたい、とのことであった。私は正直無理ではないかと思った。しかし、息子からこんな話を聞いて 反対する親はいないであろう。即OKした。短い会話であったが、なぜか違和感はなかった。現時点ではやはり英語の方が得意ではあるが、 太郎はもともと数学が得意だった。高校二年までそうだった。それが受験の配点を重視して勉強していく中で、多少おろそかになっている 。可能性は無いことは無い。かくて、太郎は家からは遠いがB塾「スーパー京大コース」にいくこととなった。京都大学をめざして。
 私は京大が無理なら阪大でも神戸大でもいいと思った。不合格ショックから立ち直るためのつなぎとして、 ちょうどいいのではないかと思った。 しかし経済的なことは常に頭をよぎる。 よく不景気で国立志向などと言われる。しかし、実際に本質がわかっている人は少ないと思う。 太郎が法科大学院に行きたいといったら、どうなるか。公認会計士の試験を受けたいといったらどうなるか。 資格試験で何年も落ち続けたらどうなるか。公務員試験を受けるならWスクールも通わないといけない。 昔のように、アルバイトで頑張ってというわけにはいかない。今の大学生は勉強をさせないといけない。 ならば金がいる。なんとなくたよりない太郎には人並み以上の軍資金が必要。私は世間一般で考える仕送りの 5割増しが必要と考えていた。本人が将来こうなりたいと思ったとき、ブレーキをかけるようではいけない。 そういう意味で、広大ならなんでもしてやれると思っていた。ただ、京大や阪大・神戸大などの可能性があるのであれば、 万難を排してそれを実現させてやりたいと思った。「もし京大に受かったら絶対に貧乏な思いはさせない。 広大に行く以上のお小遣いはなんとかしてあげる。」太郎を励ますつゆもりでさりげなく言った言葉であるが、 私にとっては重大決心であった。
 「スーパー京大コース」に行きだして太郎は生き生きとしてきた。部屋は京大対策の参考書と問題集で埋めつくされてきた。 妻と私もなんとなくうきうきしてきた。京都に下見に行こうかなどネットでツアーを調べたり、 ユーチューブで京大の紹介映像などを見たりした。いつの間にか親子3人で京大を夢見ていた。受験失敗という最悪の状態から抜け出し、 つかのま(?)の幸せを感じていた。
 5月私と妻は九州は福岡県、大宰府天満宮にいた。学問の神、菅原道真公を祀り、合格祈願のメッカとして名高い神社である。 「京大に受かりますように。」なんとなく照れながら、そしてなんとなく誇らしげに神に祈った。「京大に受かりますように。」 願いを書いた御札。回りに比べ、ひときわ立派に見えた。
 しかし、現実は厳しかった。7月の模試、京大経済学部はE判定(合格可能性20%以下。要志望校再検討。)。 スランプが効いたのかも知れない。太郎は毎日塾に通い、よく勉強はしているようであったが次の模試もその次の模試もE判定が続いた。 広大の合格点にも届かない日々が続いた。数学が難航している。難問奇問で有名な京大数学。 階段を上がれずに苦悩している太郎の状況が推察できた。
<反省>
 少し見込みが甘かった。高校3年次にかなり伸びていたので、つい高望みをしてしまった。中高一貫校が効率的なのは 高校3年の1年間を受験勉強に専念できるからである。逆に、浪人生には「伸びしろ。」が無いということになる。 それと認識が甘かったのは「スーパー京大コース」ということについてである。後で知ったが「スーパー京大コース」 はかなり京大受験に特化した勉強をしなければならなかった。一度踏み込んだら、とことん行くしかないという世界である。 ダメなら他の大学という雰囲気ではない。安易に志望校を変えると膨大な量の問題集・参考書が全部中途半端になってしまう。 過去問研究などは30年分位を逆戻って徹底的にやっていたようである。受験で大切なのは基礎であり、基礎をやっておけば大丈夫。 そういうレベル(地方国立大レベル)の勉強しかしたことのない無い私には超一流校の受験対策というものはわからなかった。 京大が無理そうなら一橋はどうか。太郎には内緒で予備校担任教師に聞いて見た。そんな子はいないとのことであった。 一橋は一橋の対策が必要で京大がダメだからとほとんど差のない一橋をいきなり受けても絶対に無理とのことだった。 しかし、苦手な国語の配点が京大の半分しかない一橋は有力な選択肢の一つであった。
 秋になりやっと数学が開花してきた。悲願の京大C判定。しかし、遅い。この時点でC判定では、浪人としては少々厳しい。 あらためて、ここで神戸大を薦めてみた。実業界でりっぱな実績があることなど。京大経済学部は併願を考えると 地歴を3科目やらないといけない。今やっている世界史・現代社会にプラスして地理を勉強しなければならない。 これは負担がかなり大きい。だからこの時点で京大経済学部を深追いすると、まず一橋がノーチャンスになる。 阪大・神戸大も難しくなる。科目が多いと力が分散し、他の大学を受ける場合もかなりブレーキになる。 早慶ほか私立受験では最悪である。結局京大がダメな場合、関関同立かMARCH(明治・青山・立教・中央・法政) ということになる可能性が強い。まさに天国と地獄。ここにきて偏差値一覧表には現れない、 そして生半可には受験することすら許されない京大の崇高な高い壁をヒシヒシと感じた。
 模試でB判定(合格可能性60%以上)が一度も無かったら、絶対に京大は受けさせない。これは以前から言っていた。 11月迷った上で京大受験は無理と判断、強く神戸大を薦めてみる。答えはノー。本人は強気。 模試の志望校欄を京大以外は空欄で出すほどの強情さ。本人にしてみればここで親から干渉が入るのが死ぬほど いやだったのであろう。交渉決裂。困ったことになったと思った。あきらめさせねばならない。一年間京大対策ばかりやってきた。 部屋にある膨大な(30冊くらい)京大対策の問題集や参考書は赤線が引きまくってある。ここまでやって 京大をあきらめるというのは本人にとって、酷なことである。しかし、ダメなものはダメ。おそらくセンター試験の後、 父としてそれをさせないといけない。気が重かった。模試判定はCが続く。 ただ、今まであまりよくなかった5科目模試で初めてC判定が出た。5科目模試のC判定は現役時の広島大でもなかった。 理科・社会が上がってきた。世界史は偏差値50台だったのが、一気に69まで上がってきた。
 12月、最終模試は駿台京大模試。駿台京大模試は傾向を踏まえた5科目模試。志望者はほぼ100%受験し、 もっとも信憑性が高いと言われる。 妻からメールが来た。判定はB(合格可能性60%〜80%)。思わず鳥肌がたった。ついにこの日がきた。 太郎の喜んだ顔が瞼に浮かんだ。しかし、同時に緊張が走った。親としては最も難しい展開になってきた。 自分なりに模試の結果から合格可能性を探ってみた。急速に伸びてきた数学はまぐれではなく、妥当な線。 他もほぼ妥当であるが、地理が悪い。しかし、ここにかなりの「伸びしろ」はある。 だが、すでにセンター試験まで1ヶ月。センター対策に追われ、地理にはまったく手は出せないであろう。 センターから、国立前期まで実質1ヶ月しかない。はたして間に合うだろうか。しかも、直前で地理に追われると 、私立大受験でかなり不利になる。しかし京大合格率は紛れもなく60%〜80%である。いずれにしろセンター試験の結果しだいであった。
 年があけて、私達夫婦はまた尾道御袖天満宮にいた。「京大に受かりますように」。二人ともそう思っていた。しかし、妻が言った。 「志望校にしようよ。」。私は即頷いた。これは実の親でないと理解できない感覚と思う。センター試験がダメでも本人は 京大を受けたいと言うであろう。京大入試は個別試験重視である。センター試験は差がつかないので、多少ダメでも挽回は可能。 本人は京大受験を決めている。私達もそれを夢見ている。しかし、玉砕だけはいけない。長い人生で最も大切な1日とも言える浪人の国立前期試験。センター試験が良ければ可能性にかけてもいいが、良くない場合はどんなことがあっても京大を受けさせてはならない。一時の感情で、一生を棒に振ってはいけない。場合によってはひっぱたいてでも、ブレーキをかけるのが親の役目である。浮かれた気持ちは私達夫婦にとって、絶対にゆるされないことであった。無言のまま私達は合意していた。私達は御札に「志望校に受かりますように」と書いた。手を合わせお祈りした。失敗だけはしないように。たとえ、第一志望の国立大学に受かってくれなくても、実力に不相応な不幸な結果にだけはなりませんように。このさい金銭的なものはどうでもいい。私立でもいい。本人が納得できる大学にいって欲しい。心からそう願った。
   正月には私立の受験校を決めなければならなかった。1月15日のセンター試験の前に願書を締め切るところも多い。 京大受験となった場合、リスクが高いので、私立選びは真剣だった。本人は無頓着というか京大以外は眼中になかった。 というかその余裕は失っていた。私達は第一志望を選ぶような気持ちで私立大をあれこれ調べた。本人は同志社大を受けるつもり のようであったが、京大を落ちて同じ京都の同志社にいくのもどうかと思った。金はかかるがいっそのこと東京にやった方がいいの ではないか。校風はどうか就職力はどうか。センター試験の後はとにかく地理をやらないといけない。必然的に私立の受験科目は手薄 になってしまう。併願が極めて難しい。気持ちとしては早慶を全部受けたいところであるが、科目の相性と試験日程から残念ながら深 追いはよくない。中央大法学部のセンター入試利用(個別試験を受けなくて良い)を大本命に考えた。本人も経済学部にこだわる気は なかったようである。早慶受験は慶応の経済学部と商学部を受験することにし、早稲田受験は残念ながら見送りとした。すべり止めで センター入試利用の立教大法学部・経済学部を申し込むことにした。
 いよいよ1月15日運命のセンター試験。初日、得意の数学で痛恨のミス。数学は8割7分とれているが、太郎としては満点狙いのはず。 ミスの内容が内容だったので、私もやりきれない気持ちだった。自分の高校受験のことを思い出していた。私は単身赴任していたが 、うなだれた息子の姿が目に浮かぶようであった。京大はあきらめたようであった。阪大を受けてもいいかと初めて妻に聞いて来た。 私も「うまいもの食わせてやれ。」「受験以外の雑談をしてやれ。」とか妻に言った。完全に敗戦ムードの中、ネットで速報などの 情報が飛び交う。翌日には各予備校からセンター試験の予想平均点が発表された。今年はかなり易化との情報。しかし、上位はあまり 変わっていないとの情報。 妻からメール。太郎がやはり京大を受けたいと言ってきた、とのこと。思ったよりいい線いっているとのこと。太郎の自己採点は 220点。 センター試験からわずか2日後の夕刻18:00ジャスト。早くも河合塾がボーダーライン予測を発表してきた。京大経済学部の 合格ライン・・・220点。振り出しに戻った。
 模試の結果から判断すると京大は合格可能性50%以上かもしれないが、浪人でもあり、私は40%と思っていた。それはやはり 京大に対する畏怖もあったと思う。小さい頃から神童と言われ、常にトップを走ってきた。それが私の描く京大生のイメージであった。 太郎はそういう種類の子ではなかった。しかし、その天下の京大に40%の可能性。賭けてもいいのではないかと思った。浪人生である ことや家庭の事情から普通なら京大は断念すべきかもしれない。この時点ではセンター試験のアドバンテージがあり広大なら90%以上、 100%に近い合格可能性が期待できる。広島において広大なら人生において何の不安もない。広大でなくても阪大や神戸大など、 人のうらやむ大学にかなりの確率でいける。このチャンスをみすみす逃し、早慶ならまだしも希望していない私立大に行くハメ になったら本当に天下のバカ親である。しかし、あきらめさせることはできないと思った。安全策を願う妻ですらそう思ったと思う。 かくて京大経済学部に挑戦することとなった。
 後期試験は神戸大経済学部に挑戦させたかった。しかし状況は厳しかった。今回のセンター試験の結果を神戸大経済後期の 配点に計算し直すと、予想合格点に届いていない(100点満点で3点程度)。神戸大学の個別試験は英数のみ。英数だけなら 東大でも大丈夫とは本人の弁。しかし、京大並の難易度の神戸大後期試験で3点のハンデはあまりに大きい。点数は取れていても 配点により状況は大きく変わる。これは想像以上に大きく本当に驚いた。 結局後期神戸大は断念し、広島大経済学部とした。本人もここにきて冒険は避けたいところだし、妥協した。しかしそれでも 安心できないところが国立大後期試験の大変なところである。 第一志望から順に、京大・慶応・中央・広島・立教という受験ラインアップが決定した。
 センター入試はいろんな形があるが、センター専願(センター試験だけで合否が決まる)で中央法・立教法・経済を申し込んだ。 中央大学法学部は法曹界の白門学閥が有名であるが、地方公務員幹部数日本一でもある。民間は良くないと言われるが、 上場企業役員数で4位(プレジデント最新号)。早稲田の政経に勝る実力派である。民間の就職データは良くないが、 これは民間希望者が少ないからと思われる。法曹界は今大変な時期であるが、法曹界以外でも立派な実績を残している。 広島大とどちらが良いか。やはり中央大が上と思う。結局リスクの高い京大を受け、ダメな場合は慶応か中央。 どちらにしろ私立大に行かせることになる。どこにいっても下宿は避けられない。金銭的な面を考えればもっとも 恐れた状況に陥っていた。
   ネットではいろんな大学の申し込み状況が途中経過も発表される。各大学の申し込み状況を毎日確認した。 中央法センター専願は2割減。毎日志願者が増えないことを願った。立教法は激減していた。難易度から見て合格は確実。 この時点で二浪の線はなくなったのを確信した。 2月9日、中央法の合格発表。合格。これで二浪は無くなった。と同時に広島大受験がなくなった。本人には中央の合格発表日 も頭に無いようであった。聞かれるまで教えてあげない、と妻。まあ、どちらでもいいかと思った。 太郎は私立大にはまったく関心を示さず、京大受験に集中していた。2月11日、久しぶりに出張先の大坂から帰省した。 私は中央に合格していたことを太郎に教えた。初めての大学合格だったので、思った以上に喜んでいた。ひょっとしたらこの 伝達の役目を妻は私にゆずってくれたのかもしれない。ひさしぶりのあどけない笑顔であった。中央の法学部だったら、 早慶と同格だなどと言っていた。B高校のレベルからして、友達などにも少し鼻が高いのではないかと思った。 続いて立教法・経済も合格。
 2月17日、太郎はいよいよ東京遠征。第二志望、私学最難関慶応大学に挑む。商学部・経済学部の連戦となるが、 妻の東京在住の親戚(叔父)の家へ2泊。東京が初めての太郎を叔父は空港に迎えに来てくれ慶応の下見に連れて行ってくれた。 本当に心から感謝したい。やはり親族とは有りがたいものである。慶応は商学部はまあまあだが、経済は全然ダメとのことであった。 まったく対策をしていないので、こんなものだろうとのことであった。商学部の方は案外いけたのではないかと期待した。
 2月24日太郎はいよいよ京都へ。妻も一緒に京都へ。初めて見るいにしえの都。京都駅・加茂川・そして京都大学。 さぞかし感動したことと思う。妻からいくつもの写メが届く。「京都駅」「加茂川」「時計台」「吉田寮」など。 2月25日初日は京大受験の天王山ともいえる数学と最も苦手な国語。運命の1日、人生で最も大切な1日。 神は味方してくれた。初日を終えた太郎は笑顔で帰ってきた。数学が非常に簡単だったとのことだった。 1日目としては会心のできだったようである。他の人はどうだったのか。ただ、絶望でないことだけは間違い無い。
 2月26日京大2日目の午前中。慶応商の合格発表日である。メールが来た。補欠C。なんのことかわからなかった。 妻が調べたところ無理そうとのこと。補欠にはAからFまでランクがあり、例年Bまで受かりCはダメとのこと。 私も仕事を中断してネットで調べた。次のメールでいきなり、京大ダメそう。太郎からのメールがきて 「無理言って受けさせてもらったけどダメみたい。御免なさい。」とのこと 一瞬放心状態になった。仕事も忙しく非常に苦しい時間だった。とっさに妻を慰めねばと思った。 妻も仕事中。メールなど打ったが、そうとうがっくりきている。  わずか3時間の間に2校が絶望的になった。
 あくる日、太郎は朝食を食べなかったとのこと。今までそんなことは無かったので、どういう状況なのか心配であった。 2月28日追い討ちをかけるように慶応経済不合格のメールがきた。 妻は東京(中央大)の下宿を探し始めた。私達にとって高い家賃はかなり厳しい。良いところは推薦やAO入試の人 がさっさと抑えている。国立発表後に契約できるところなど限られている。下宿代どの位だろうなどと推測した。
 9日夜(発表前夜)なんとなくいやな予感がして、大坂から「交通事故に気をつけて。」というメールを打った。 3月10日発表当日。朝、発表時間だけをネットで確認した。落ち込んでいるだろう妻にいろいろ聞くのも気が引け、 何も連絡しなかった。発表は12時。職場の皆の前で動揺したくなかったので、12時ジャストに食事をとり、連絡を待つ 。妻に催促するのも気が引け、じっと待つ。遅い。12時30分まだこない。12時34分メールの着信。デスクを離れ一人になる。 深呼吸をして携帯を見る。たった一言のメールだった。
「やっぱりダメだったみたい。」
 涙ながらにメールを打った妻の姿が目に浮かぶ。私も強い脱力感を感じた。そうした中で妻と太郎をなんとか 励まさねばならないと思った。太郎の夢はかなわなかった。そして私達親子の受験も終わった。私は父としての 役割を考えてみた。まず太郎をねぎらう言葉である。月並だけど「頑張ったね!やっと受験から開放されるね!」 今日のところはこれでいいのではなかろうか。これから大学生活を向かえるにあたりわずか20日余り。子育て最後の 正念場であろう。万全をつくし、大学デビューをさせなければならない。希望を持たせ、いいスタートを切らせる ことこそ大切なことであろう。人生は「塞翁が馬」。今にして思えば中央大が京大と同じ関西の大学でなく、 東京の大学でよかったと思う。
 後日、五月晴れの東京、多摩の中央大キャンパスに行ってみた。道行く女子大生の姿がまぶしかった。緑のきれいな 陽射しのあたたかなキャンパスであった。心配でたまらなかったこの1ヵ月。大学生となった息子を見るのに異常なほど 緊張した。しかし、迎えてくれたのは意外なほど明るい太郎の笑顔であった。一つの朗報があった。司法試験をめざす サークルとしては日本一と言われる「真法会」。難関突破し、入会が認められたとのことである。将来は法曹界を 目指して頑張りたいとのこと。ふと学費の事が頭をよぎる。最短六年で1500万。しかし、なぜかどうでもいいような 気がしてきた。いいではないか。太郎の笑顔さえあれば。太郎のアルバイトには頼るまい。奨学金も貰わないことにしよう。 全力で太郎を支えてやろう。愛する太郎の夢は私たちの夢である。この緑美しいキャンパスで、太郎の新しい人生がはじまる。

【 中央大学法学部 】

法曹界の白門(はくもん)は有名であるが、 公務員や実業界でもかなりの実力があるのはあまり知られていない。実業界は弱いと思われている。しかし、 実際は上場企業役員数(学部別)で4位。東大経済や早稲田政経をしのぐ。
<中央大法学部の実力>
地方公務員幹部数1位
弁護士数2位
検察庁幹部数2位
裁判官幹部3位
上場企業役員数(学部別)4位
<主な卒業者>
笠間治雄 検事総長
海部俊樹 元内閣総理大臣
御手洗富士夫 前日本経団連全会長
鈴木修  スズキ会長
鈴木敏文 セブン&アイホルディングス会長
他多数
(この物語はフィクションです。)                       完

ミニグリル鍋 ちょい鍋
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【小型カメラ】腕時計型 ビデオカメラ 4GB 640*480画素 2Mピクセル
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【小型カメラ】2011年モデル・キーレス型スパイカメラ(スパイダーズX-A220)1200万画素/32GB対応
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お家でカラオケ練習が出来ちゃう。「一人deカラオケ」
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阪神タイガース球団公認 7インチワイド ワンセグ内蔵ポータブルナビゲーション CN-700THT
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